Raul Midon - "Synthesis"

一番低い場所にある力強さ


レイ・チャールズから始まりStevie Wonderが引き継いだ偉大な盲目シンガーの系譜。現在の継承者は間違いなくこのRaul Midonです。2005年の処女作一枚でその位置を掴まえた。あの作品は誰しもが認めるレベル。逆に2007年の2作目は丸くなった部分に独自性が少なくなったと思い、若干の失望を感じていた。だから本作で本人の独自性が明確に出てきて非常に嬉しい。

処女作で鬼レベルのギタープレイをしていたから、巷ではRaul Midonの独自性といえば「楽器の演奏能力」になっていると思う。けど、それは人の本質ではないと思うな。もちろんあのギターはかっこいい。楽器が好きな人ならば確実にハマル。だけど、個人的には1stの07:Expression of Loveを推したい。演奏としてはとんがってないけど、この曲にStevie Wonderが参加した意味を痛感すべきなのだ。「Loveの表現方法」として、この曲を届けてくれた事。このレベルの内省感は盲目シンガーだからこそと感じる。そして何度も取り上げた10:Never Get Enoughの凄さ。

R&BのVCを見ていると、男性歌手はマッチョに鍛えた上半身を見せびらかすことが多い。それは確かに分かりやすい力強さ。けど、そんなのはお子ちゃまな表現方法だし、単なるフリルでしかない。無いよりは有った方がいいかもしれないけど、必須では無い。本当の力強さとは何か?《男》であるならば、そこを突き詰めるべきなのだ。

人は 生きていれば 色々なことが生じる。
誰だって、どうしても落ち込んでしまう時が一度や二度はある。そんな人生で一番低い場所。その場所でどれだけ力が湧き上がってくるか? 人の価値は此処しかなくて、年収なんてフリルだ。いくら年収が高くても会社を解雇されて自殺するなら、それは弱い人生なのだ。というよりも、自分のフリルを自分自身と勘違いした末路と言うべきか。

Raul Midonの本質とは、「一番低い場所での力強さを伝えてくれる」であり、この感覚はStevie Wonderよりも強いと思う。それはRaul Midonの下積み時代が長かったからなのだろう。本作の01:Don't Be A Silly Manはそれだけの価値がある曲。何よりもこのタイトルが深い。

《愚か》とは自己のプライドを一番に考える人
頭がいいとか悪いとかそういうレベルの話じゃない。今、自分自身が一番低い場所にいると感じたら、この曲を聴くべき。そしたら己のSillyが見えてくる。それが見えてこれば明日がある。逆にそこから目をそむける事が本当のどん底なのだから。

03:These Wheelsもいい。この2曲を聴き込めば再び歩き始めれる。歌詞の中のDarknessという単語の重さ。半端ないです。このDarknessと完全に同一になれれば、人生はもう一段階強くなれる。そこまで断言できるな。

ちなみにこの3作目の他の曲もお勧めです。核は1と3です。それだけは最初に明示しておきたかったから。続きは次回で。
[2012/02/11]
 
 

Darknessとの付き合い方


本作の03:These WheelsはDarknessとの付き合い方の指針になっている。一般的にはDarkness:闇は悪い意味になる。けど、個人的には「良い闇」と「悪い闇」があると思ってる。これまでもレイ・チャールズやStevie Wonderを聴いてきたけど、初めてじゃないかな。目の見えない人の《闇》の感覚が出ているのは。ネガティブがゼロの闇は初めて聴いた。

根源的な世界認識については真面目に考えてもいいと思ってる。たとえば宗教でもそう。神だけの一元論か神と悪魔の二元論か。「愛の反対語は何ですか?」と質問するだけでその人の恋愛観は大体分かると言ったのは誰だっけ?

普通は「愛⇔憎しみ」とすることが多い。けど、「愛⇔無関心」とする考え方もあって、僕はどちらかというと後者に近いかもしれない。同じように「光の反対語は何ですか?」と質問すればその人の落ち込む時の癖が分かると思っているのも事実。

一般的には「光⇔闇」になるのかな。「光⇔影」の人もいるだろうね。けど、個人的には両方違うと思ってる。闇は無であってネガティブでもポジティブでも無いと思っているから。「逃げたい」という気持ちが出てきた瞬間に完全ネガティブになるけど、そうじゃない闇は単なる底なのだ。ここら辺はHP時代にも書いた。

感覚を遮断していけば遮断していくほど、心から出てくるモノがある。
人間の中で一番強いのは視覚だからこそ、闇をちゃんとつくればそれだけで通常と違う意識状態になる。下手に合法ハーブなんてやってるからアホなのだ。ドラッグでいける世界も座禅でいける世界も同じ。ドラッグは薬物の助けを借りているから最終的には廃人になる。「ヒッピームーブメントの時にインドのグルにLSDを使用させても意識状態が全く変わらなかったのに腰を抜かした」という事実を噛み締めた方がいい。

けど、座禅はきついんだよね。骨盤や姿勢がしっかりしてない人は足さえまともに組めない。だから「真っ暗な風呂」を薦めているワケです(笑 本当ならフローテーションタンクの方がいいけど、こんな設備は不可能だから。この記事にあるように
タンクの効果については次のようなものがあげられている。
ストレス解消とリラックス、自己啓発と体重減少、妊娠による身体のストレス解消、鎮痛、学力向上、科学的研究、スポーツ競技の結果向上とスポーツ選手のためのリハビリ、美容、ビジネス、創造力、感情に関する問題とうつ病、自然治癒力と免疫力。

個人的には真っ暗の風呂はタンクの1/2〜1/5の効果があると思ってます。って、タンクをした事無いから適当だけど(笑 やる価値あるよ。最初はすごく怖いけど。「寝る時に豆電必須な人」は薦めれないかもね。昔はギリギリの時だけやってた。けど、この03:These Wheelsを聴いてから頻度を増やしてる。必要性が無い時に真っ暗な風呂に入っても、単に30分ほど寝ちまって、風呂が冷めて、「さぶー」と目が覚めるだけなのだが(笑 それはそれで上手く人生が回っている証拠だから良しとしましょう。


完全な闇の中で何をすべきか
その状態になってみれば勝手に心から湧き上がってくるものがあるから、別に人それぞれでいいと思ってる。って、これだけ薦めているので、私個人のスタイルを書きますね。

「言葉に出来ないプレッシャー」を言葉にする作業
これが真っ暗な風呂でやってること。プレッシャーをコントロールするのは一流アスリートでは常識でしょう。それはアスリートだけでなく全ての分野にとって必須だと思ってる。大事なプレゼンの前とか、もちろん受験の前日でもいい。プレッシャーが重ければ重いほど、その中に言葉にできない感情が蠢いているんだよね。それを言葉にする。それこそが真っ暗闇の中でする作業です。言葉にさえ出来れば70%は先に進めているから。

03:These Wheelsの歌詞をみるとネガティブな闇を歌っているように見える。それはもちろん分かってるよ(笑 けど、この歌には「闇から逃げたい」という気持ちが無い。個人的に一番大事なのがここ。初めて聴いた時「正しい闇に誘ってる」とまで感じてしまった。「久しぶりに真っ暗な風呂入ろうかなぁ」って素直に思ったから。そうよ、「真っ暗な風呂」とか言うから変人にされるんだ。ライト・フローテーションタンクでどうでしょう。真っ暗なのにライト、これがネーミングのミソとしておこう(笑 そしたら「趣味は何ですか」「うーん、ライトフローテーションタンクかな」 この流れ、結構いけるかも(ホントか

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中学時代、スラムダンクの連載は衝撃的だった。それまではキャプテン○のように物理法則を無視した必殺技の世界だったのに、スラムダンクはあくまでもリアリティ−なスポーツ漫画だったから。そして最近凄く気に入っているのがベイビーステップ。これ、マジでいいです。テニス漫画といえば「テニスの王子様」がキャプテン○の伝統を受け継いでいるけど、このベイビーステップは新しい時代を作るかもしれない。

それ位に「今の自分のプレッシャーを頭に明示的に思い浮かべて、それを全部でなく80%消した状態が一番良いサーブが入る」というのは深い。決勝戦が近づくにあたってプレッシャーが高まってきている主人公。試合に負けたらプロの道が絶たれる状況が輪をかける。「もしテニスのプロになれなかったら・・・スポーツメーカに勤めてテニスの商品開発をする。テニスが強い大学→企業に行く。普通の大学に行ってテニスを趣味で楽しむ」等の様々な将来の可能性を図で書き出している場面も凄い。僕の知る限りスポーツ漫画で初めてだと思う。ここまでメンタルコントロールが出てくる作品は。
ただ、一つだけアドバイス。机に向かって書き出せば思いつくプレッシャーは根源じゃない。本当にやっかいなのは積み重ねてきた自己像(=エゴ)に結びつくもの。主人公は素直で頭も回って周囲の環境に恵まれとんとん拍子で上手くなっている設定だから、ここら辺は縁が無いかもしれないけどね。


人の心の奥には言葉に出来ないプレッシャーがある
それをあぶりだして言葉にするには真っ暗な風呂が一番いい
あの漫画で主人公がグランドスラムの決勝戦のコートに立つ日がくる来るなら、その前日は間違いなくコレで決まりです♪ 個人的には年下の可能性がある選手に抜かれそうになって、可愛い彼女の気持ちもそちらになびいて、負けれらない試合って展開も期待してるけど、それは少年漫画ではありえない展開か。けど、現実はこちらの方じゃないのかな。努力して一つずつ築き上げてきたモノ。周囲もそう認識していたモノ。それが壊れそうな時のプレッシャー。この作品が真に側に来てくれるのはそんな状況。いわゆる勉強エリートが社会人として使えない事が多いのは、勉強が無意味なのでなくこの状況での対処方法を知らないからだと思ってます。「挫折力」という言葉は重い。そういう意味でもこの記事はナイス。

今まで「真っ暗な風呂」なんて仲の良い友達にさえ言ったことさえなかった。けどRaul Midonの本作を聴いて一人ぼっちじゃない事を知った。というよりも時代が変わりつつあることを感じる。座禅がブームになった今、次はくるで〜ライト・フローテーションタンク。(C)つけておこう(笑

本作を聴いて回数を増やしていたら、真っ暗にした時に洗面所のLEDが気になりだした。確かに現状でも目の前の手は全く見えない。個人的な定義は「目の前に手をもってきて見えるか」だから、闇としては一応OK。けど、横を向くとこのLEDのせいで風呂の扉がぼんやり浮かぶんだよね。こういうのが一番始末におえない。薄っすらと浮かぶ扉は偽りの希望の象徴。それが一番クソなのだから。結局、テープで塞いでしまった(笑
 
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