Sade - "Soldier of Love"

 

彼女が独り佇む場所


10年間に一作という歩みはリスナーとの合意のようにも思える。92年の4th:Love Deluxeは同時代で聴けず、2000年の5th:Lovers Rockから4年かけて全作聴きこんだ。だから本作を聴いた時は唖然としてしまった。彼女の全作の中で、一番重い。暗いなんてレベルじゃない。どん底と言ってもいいと思う。

タイトルのSoldier of Loveの重さ。逆さにしても明るいタイトルじゃない。このジャケの色も暗いけど、まさかここまで底の曲を集めてくるとは思わなかった。曲だけ見れば今までのSadeらしい良質な曲だけど、歌いこまれた心情はとことん重い。

誕生日は1959/01/16だから51歳。その歳でこの場所か・・・。世のR&Bファンには申し訳ないけれど、ハッキリ言って、聴きこむほどに凹む。この凹み具合は恋愛のどん底を歌った女性歌手の傑作:MaryJ.の2nd、Syleenaの1st、Kelly Priceの1st、Keyshia Coleの1stよりも重い気がする。彼女らの作品は歌った時期が若い。だから「明日になったら東の空から太陽が昇るよね」という共通理解がある。けど、この作品にはそんな明日への希望が見えない。まるでこの重さを抱えたまま、彼女はこの先の人生を歩んでいくんじゃないか…とまで思わせる。

恋愛でSoldierって、戦う相手は誰? まさか相手の男じゃないよね。喧嘩ぐらいならセーフだけど、「戦う」まで来たらもう恋愛の範囲外だよね。だから、一般的に思い浮かべれば略奪愛? まさかSadeに限ってそんな訳は無いから、「悲惨な状況に立ち向かう」を表現したのかな。別に女性の年齢をとやかく言う気は無いけど、男性だろう女性だろうと51歳で恋愛をSoldierと表現する状況は、本気で追っかけたくない世界です・・・。まだ渡辺淳一の「中年燃え上り」な小説を読んでる方が可愛げがあると思ってしまう。

1:The Moon and The Skyから通常よりも低い。個人的には10段階の2段目ぐらいの低さだから、一般的にも聴き込める範囲内だと思うけど、月が浮かぶ空か。このジャケの風景は月光だったのか?嵐の前の静けさに見えてたよ・・・。2:Souldier of Loveがガツンとくる。曲としては淡々としているけど、歌われている心情は上記にあげた他のどん底傑作の最深部と比べても遜色が無い。曲のsoulに入っていくと、危険信号が鳴る。本作からSadeを聴き始めた若い人は確実に逃げ出すぞ。聴き込むほどに、バックの音が不吉な響きのように思えてくる。もちろんSoldierという言葉には、そこに打ち勝つだけの意志が表現されているのだけど。

3:Morning Birdは夜明け前の空が青白くなってきた時間帯であって、太陽は地平線から昇ってないと思う。けど、夜の空から黒色が抜けて透明になっていく情景を見事に表現しているね。ただ、2曲目からちょとだけ上がっただけで、心情の低さはかなりのレベル。低い地点での透明感を表現した名曲だと思うけど、2曲目でギリギリだったリスナーは本曲の低さに耐えれないよ。

4:Babyfatherが明るい。やっと水面から顔を出した感覚。マリアナ海溝から南の小島に来た雰囲気で、ちょっとレゲエっぽい気もする。どこでも・どんな時でも流せるし、落ち着いた中にウキウキ感まで伝わってくるから名曲だね。ところが、5:Long Hard Roadでまた下がる。。このまま上がってくれればいいのにね。見事に期待を裏切って、再び底へ。これは辛いです。まるで彼女のLong Hard Roadを追体験してるかのよう。

6:Bring Me Homeはニュートラルだと思います。明るくも暗くもない。5曲目よりは明るくなった分、リスナーとしてはうれしい限り。穏やかな曲で、この地点が彼女の居場所なのかもね。そんな気がする。ところが7:Be That Easyでまた潜る。このアップダウンの多さが、他のどん底傑作アルバムよりも多い。MaryJ.のMy Lifeだってもうちょっと聴きやすかった気がするよ。

8:In Another Timeはニュートラルかな。個人的には6曲目よりちょっとだけ低い気もするけど、これなら全然大丈夫です。普通に聴けるし、Sadeらしい曲。バックのサックス?の音がいい。9:Skinは明るい曲です。4曲目ほどじゃないけど、十分に明るいと分類できると思う。7→8と8→9は、連続でトーンが上がる。本作では初めてだね。ふぅーーーー。やっと肩の力が抜けたよ。底の曲があるのはいい。それが続くのもかまわない。けど、こんだけアップダウンがあると、本当に疲れる。

10:The Safest Placeでまた下がる・・・「最後ぐらい上がってよ」という素直な希望を打ち砕いて。もちろんそこまで低い場所では無いから聴くのは可能だけど、もうちょっとだけ明るい手触りにして欲しかったなぁ。明るくして欲しかったなんて今まで使った事ないけど、本作で初めて使ってしまった。。

男性歌手だろうが女性歌手だろうが、どん底傑作アルバムを聴き込んで来た私が言うから間違い無いです。本作が、一番辛い。他の作品には若さの勢いがあるから。どれだけどん底を歌っていても、その勢いに焦点を合わせれば聴き抜く事ができた。けど、さすがに本作にはそれが無い。

この状態を一生抱え抜く覚悟に満ちてる
この事実が一番Heavyでした。

10年前はSadeのことを全く分からなかった。そこから《横たわる時の長さ》と《風化させない痛み》と表現できるまで聴きこんだ。けど、本作を聴いて分かったのは、《風化させない痛み》なんてチンケなものじゃない。《深化する痛み》だよ。もちろんこれまでの作品も痛みはあった。1st:Diamond Lifeと5th:Lovers Rockには無いけど、2nd:PromiseのJezebelや、3rd:stronget than prideのI never thought I'd see the dayとか、4th:Love Deluxeのpearlsにはある。けど、それらの作品と比べれば一目瞭然。間違いなく、深化してます。

本気の恋愛から逃げなかった人は、全てマリアナ海溝の底まで来て、そして浮かび上がっていく。
そんな軌跡の中で、Sadeだけは浮かび上がる事を拒否したかのようで・・・確かにSoldierです。そうとしか言いようが無い世界。そんな意味では今までの作品の中で一番聴きこむべきかもしれない。逆にこのトーンの低さに浸れない人は、4,6,8,9だけを抜き出せばいいと思います。今までのSadeの作品と比べても同じレベルの聴きやすさになるから。

最初から最後まで通して聴くと、このアップダウンが重い。アルバムを聴きこんで、ここまで凹んだのは、Marvin Gayeの"Here My Dear"以来かも・・・。そこまで感じた作品です。世のSadeファンの総スカンを喰らいそうだし、こんな事ばっかり書いているから、2chでああいうコメントを書かれるのも分かるけど、これがSoldier of Loveというタイトルの作品への、本サイトの返答です。

 



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