Solange - "A Seat At The Table"
「私は私、姉は姉」の先の地点
姉のビヨンセの近作すら聴きこんでないけれど、妹のSolangeがここまで伸びるとはデビュー当初は思いもしなかった。兄弟・姉妹のツテでデビューする歌手は多いけど、殆どは一作で退場。三作目までいけば賞賛に値する。本作は8年ぶりの三作目だけど、ここまで傑作ならば大絶賛。同じ立ち位置での一番の成功例はマイケル・ジャクソンの妹のジャネットになるのかな。けど、兄と妹は別性だからまだ甘い。僕が体感で知っている90年代以降で、同じ性別で、年長の方が凄くメジャーで、そしてここまでの作品を発表できたのはSolangeだけだと思う。だから本サイトの絶賛ラインである「ここまで聴き込んだ大量の作品のなかでもNo1」
本作は巷の評判が高いのと、このジャケで買った。New Classic Soulの傑作群を聴きこんでいればジャケ買いできる。最近は新作のジャケすら目にしない生活になってて、ホント反省してます。歌手名と作品名すら削ったのはそれだけの意気込みなのだろう。
名前を知らずに流れているのを聴けばSolangeとは気づかない。それぐらいに深みのある声を身につけている。そして曲の良さ。本作を聴いても「Solageって姉の七光りだよね」という人はBlack Musicに居場所が無い。アルバムタイトルのとおり、それだけの席を打ち立てた作品となっている。
この作品を「Solangeの人生」と重ねてどれだけ深く聴けるかは、純粋にリスナーの境遇に影響する。もっとシンプルに言えば、姉の七光り、兄の七光りと言われ続けた量。その点で、僕は一歳差の兄との2人兄弟だけど、劣等感ほどの差はなかったから、心の奥底の本当に深い部分で共感できる素地がない。そういう人がガツンと描いた文章読みたい。それが一番の気持ちです。
まずプレルードの01:Riseの素晴らしさ。インタルードに緑をつけることさえ珍しいのに、プレルードは初めてじゃないか? リリックが強いのにメロディーとしても聴ける点で素晴らしいし、深みを身につけたSolangeの声が凄い。そしてもっと凄いのは、この曲単体でリピートできること。たまたま最初のプイヤーの設定がTrack Repeatになっていて、5回繰り返してやっと設定が間違っていることに気づいた。それぐらいに深みがある。この聴き方をやってない人は、ぜひ試してみて欲しい。ほんとびっくりするぐらい5回連続は軽く聴けるよ。
02:Wearyも文句ない。04:Cranes In The Skyもそう。全曲緑にしたくなるぐらい。個人的な評価軸では06:Mad (Feat.Lil Wayne)のラッパーの入り方。アルバム全体の性格をKeepしながら、飽きない構成にするためのチェンジオブペースになっている。どんな傑作であっても、アルバムの中である種の幅を作る必要はある。その幅が大きすぎると、アルバムの焦点がぼける。この作品の凄さはこの曲です。アップテンポな07:Don't You Waitも上手だけど、これなら他の傑作でも到達できる場所。内省的な作品でfeatのラップが違和感が無い曲の方がレアだと感じる。
重くなるのは09:Don't Touch My Hair だけど、上手くこの曲を言葉にできない。だから緑に出来ない。11:Where Do We Doとセットで聴くべきだと感じるし、この2曲がアルバムの最深部だと思うのだけど・・・。13.F.U.B.Uが一番不明かな。一曲毎にインタルードがある作品だけど、13と14の間はない。ここの理由が分かったら、もう一歩聴き込めるとは思うけど、その壁を越せない。最後の方の曲はあまり感銘をうけない。けど、悪い点を言えるほど本作について理解できていない。
まさかWiredでも取り上げられるとはね。純粋に素晴らしい。
最初は「姉は姉、私は私」
姉の影を脱して私が確立してくると、順序が逆になる。それが「私は私、姉は姉」
その先に来るのはシンプルに「私は私」
けど、それは姉の無視のようにも思える。それが本作を聴いた素直な気持ち。
セルフタイトルにならなかったのが大きな謎。アルバムタイトル曲も無いしね。ここを解題できる人を望む。
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個人的には偉大な兄貴&同性として、Gerald Levertの弟のショーンの作品と比べて聴きたい。
- 2017.04.08 Saturday
- 2016
- 21:58
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