Kenny Lattimore - "Anatomy of a Love Song"

昨晩の雨があがった朝が持つ爽やかさ


初期3部作はおろか、お蔵入りになった前作:Back 2 Coolから比べても切迫感の強いジャケット。タイトルのAnatomyという単語も非常に珍しい。色々な意味はあるけど、「解剖学」なんだろう。「恋愛曲の解剖学」というタイトルでアルバムを発表する意志はこのジャケの表情を眺めると、より強く感じる。

クリスマスに向けて発表されて非常に好評だった03:Heart Stopsであっても、このアルバムの中に置いて聴くと、奥底に悲しみを感じる。シャンテと離婚して、その先のことは知らない。あんまり記事を探す気もない。けど、本作にはその時の想いが収められている。この感覚は駄作のTimelessはおろか、前作でも感じなかった。前作の傑作曲を単に再録したアルバムでは無い。より深化している。奥底に哀しみを湛える爽やかさはJavierも表現した事が無い。

本作がKenny Lattimoreの最高傑作なのだ
この意見が20代には伝わらないのは分かってる。けど、生まれつきの爽やかさよりも、沢山の出来事が生じた後の爽やかさの方が価値がある。濡れたアスファルトの分だけ光り輝く早朝のような感覚。Kenny Lattimoreがこの地点を見せてくれたこと、言葉にできないぐらい感謝してる。

アルバム構成は前作の全曲に加えてシングルのみだった4曲を追加して14曲にした形。歌い直して再録したのか、そこまでの判定は出来ないけど、Kenny Lattimoreの想いは感じる。もともと凄くイケメンだったのに、切迫感が強すぎてこのジャケではイケメンに見えない。そこに深く惹かれている。Tyreseから始まったこの流れにDalvinが続く事はないと思うが、TyreseとKenny Lattimoreが揃えば、こちらが王道なのだろう。
 

前作は1曲目が Beautiful Nowheresだったのに、今回はLove Me Back この選曲の時点でアルバムの性格を明示している。02:Remix This HeartはThis Heartという曲のRemixではなく、動詞としてのRemixなのだろう。Remixという単語をこうやって使うのは珍しい。ひっそりとした手触りの曲で、この2曲で昨晩の雨を感じる。長さが短い曲だから、インタルードが長くなったような感覚。03:Heart Stopsの凄さ。この曲をスタジオアルバムに収録しないのは大きな損失だから、こうやって収録されて良かった。Youtubeで単体で聴いた時はクリスマスに合う曲だと思ったのに、本作の中で聴くと奥底が見えてくる。最初はHeart Spotsだと思ってた。なぜStopなのだろうね。このアルバムに収録されたことで、初めてStopの意味が出てきていると思うけど、まだ言葉に出来ない。

04:Still Goodは一番デビュー当時に近い作品。当然ながら前作と同じ価値判断なので、05:Find A Wayは緑で。被るのは飛ばします。09:Look Of Loveは2作目と同じ手触り。この内省的な感覚は最高。内省は内向きの視線というか頭で実施するものだけど、この曲を聴くと皮膚感覚でする道が見えてくる。自分の肌を折りたたんでいくような内省はこの曲で初めて知った。久しぶりにいい男の階段を見た。2作目は頭が先行していたけど、この曲には肌理の細かい手触りがある。

前作ではBlood, Sweat & Tearsを最高傑作としたけど、本作は違う。アルバムタイトル曲が無い状況の中、この曲がアルバムタイトル曲であり、Look Of Loveではあまりにありふれた名前だから、アルバムタイトルを変えたのだ。この曲こそが本作のコア。Stevie Wonderやマクナイト以来、ずっと視線の内省を追っかけていけど、肌で出来るとはね。驚愕を越えている。100回でも1000回でも聴きこんで、感覚が欲しい。

この曲の存在で、Kenny Lattimore自身だけでなくBlack Musicの世界において、10年に1作のレベルと言える。

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他の曲については前作のレビューを見て下さい。とりあえず、今すべきことはAmazonで買いなおす。この作品がちゃんと売れたら、Kenny Lattimoreはマクナイトレベルまで行くし、Black Musicは今後も豊穣な大地であり続ける。男が男に教える肌感覚があるとはね。根が内向的な身としては、Charlie Wilsonよりも本作の方が親和性がある。22歳でCalvin Richardsonを聴けたことが幸せだったように、本作を10代で聴けたらそれは大いなる幸せ。

性器は皮膚感覚が密集しているだけであって、現代はそこだけに価値を与えすぎなのだ。縛ったり蝋燭垂らす人達は、皮膚感覚を鍛える道を諦め、強刺激をやりすぎなのだろう。これまでに読んだ断片的なフレーズが、本曲が示した「皮膚を畳む事と、皮膚を開くこと」に引っ張られて浮かび上がってくる。5連続ぐらいで、ここまで行くのだから、この曲は突き詰めるほどに、今まで見た事が無い世界が見えてくる。信じられないレベル。
 




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