反省と内省

「反省と内省の違いは何か」についてSoulの中で内省を突き詰めた作品として最高傑作であるStevie WonderのInnervisionsを聴きこんだ結果を基に説明します。
 

音楽を聴く意味は色々とあるけれど、R&B-Soulを聴き込む意味は大きく二つあると思ってます。
【音楽的なこと】
【精神的なこと】 

精神的な事は大きく2つに分かれると思ってます。
【Heavyな状況の受容とそこからの出発】
【Innervisions】

Heavyはアメリカにいる黒人という立場だからこそ生まれた部分。もちろん他ジャンルにもそういう立場の人はいるけど、ジャンル全体の特徴としてもっているのはBlack Musicだけだと思う。だからこそSoulと命名されている。


今回、話題にしたいのはInnervisionsの方です。これは、このジャンル全体の特徴とは思ってない。他のジャンルと同じスタートラインに立っていると思う。ただ、自分はInnervisionsの極北:Stevie Wonderの同名アルバムで表現された世界以上を知らない。そして、歌手としてこの方向性を担っていると思うのはBrian McknightやAlicia Keysぐらいかな。けど、MaryJ.やトニブラのDeepな曲にはこの方向を感じる事がある。

もちろんリスナー側にとっても、Innervisionsの方向性を追っかけるのタイプの人は少ないと思う。
けど、そんな人のためにこの文章を書きます。今までマクナイトやStevie Wonderについてコメントしてきたけど、この方向に狙いを定めるならば反省と内省の違いこそが入口」だと、やっと明確に言えるようになったから。

もちろん昔はこの違いが良く分かっていなかった。自分がしている事も反省なのか内省なのか、それも良く分からなかった。必要に迫られ最低限の事しかしてなかったから。そんな風に失敗を重ねてきたけれど、30歳を過ぎてやっと振り返って説明できるようになった。

反省:振り返って考えること。過去の自分の言動やありかたに間違いがなかったかどうかよく考えること。
内省:自分自身の心のはたらきや状態をかえりみること

とgooの辞書に書いてある。この定義で全く問題ないのだけど、今はもっとシンプルに言えるようになった。

反省:自分の行動を振り返って考える事
内省:自分の感情を振り返って考える事


気づいてみたら、gooの定義と同じだね(笑 けど、これだけシンプルにした方が、先に進めると思う。
例えば、アル中の人でも怒られれば反省する。そして反省して出てくるのは感情なんだよね。「仕事でイヤな事があったんだ」とか。じゃあ、感情を振り返ると何が出てくるのか?それが一番のポイントだと思ってます。

感情には大きくポジティブ(ウキウキ)とネガティブ(どんより)があって、曲もこの二つに対応させる事ができる。反省はネガティブになるけど、その先のポジティブを摑まえようとしているから、曲全体の中では1/5ぐらいになる気がする。R&Bは男がアホな分だけ反省している曲が多いと思うけど、個人的にそういう曲を選んで聴いているだけかもしれない(汗 反省している曲の中で内省のレベルまで行ってるのは1/10位かな。いや1/50かもしれない。もちろん感情を表現している曲はゴマンとある。けど、内省は感情を振り返って考える事なのだから、結果としては感情の1つ上のレベルに行かなくちゃいけない。感情を後から振り返って否定するのは楽だけど、それはホントの内省じゃないよね。

去年、「感情とは複数の身体モードの事だ」という説を読んだ。
例えば、怒るというのは相手と殴りあうための身体モードの事。だからこそ反射的に拳を握るのだと。怖がるのもそう。首を縮めて動かなくなるのも、天敵と合った時は草むらでじっとしているのが生き延びるの繋がったから。動物として生きていくには、こんな風に身体モードを複数持つのが大事だったんだと。

この説は結構信じてます。問題点は現代社会において、こういう身体モードが有用じゃなくなったこと。だから、もっと感情を抑えて理性を強くすればいいのだけど、あまりにこれをやると、逆に人生の無意味さを感じたり、子孫を残す事をコストだと思ったりして、種として滅亡するんじゃないかな。仕事で感情を出しすぎたら絶対に失敗するけど、感情的な側面がゼロの仕事も逆にイヤになる。だから単なる感情の否定は答えじゃないと思う。


感情自体を突き詰めても何処にも行かない。
そもそも感情が何個あるかも人間は分かってない。分類する事自体が恣意的で意味の無い作業の気もする。喜怒哀楽というけれど、4つとは個人的に信じてない。HPの方では「心の震え」と書いてあるけど、これもAll or Nothingで極論すぎる。仏教では煩悩は108というけれど、煩悩(欲)と感情はどこまで重なるの? 

感情自体が客観的な分析に耐えないのだから、内省自体が無意味という意見もある。
けど、やっぱりそれは違うと思うな。感情は相手の行動によって呼び起こされるから。もちろん全ての行動が意識的な訳でもない。例えば可愛い子の何気ない視線を勝手に勘違いする男の子もいるだろう。JoeのGood Girlsも女性の立場からすれば身に覚えが無い話だろうけど、Joe自身は歌にしてしまう位の行動として受け取っているから。そのチグハグ感と切実さがあの歌を名曲にしてるしね。

感情を突き詰めてたら、相手の行動が出てきた。そこまで良しとしよう。
で、どうすれば良いか?
相手に二度とそんな行動をとらないでと頼む?
それで上手く行くならこの世に歌なんて必要ねーよ。
だから、「相手の行動」も不十分なんだよね。

相手の行動と自分の感情の間に《何か》がある。
その何かを目指すのが内省だと思う


R&Bの中で一番最初に内省を感じたのは、マクナイトの1stと、SHAIとP.M.Dawnです。マクナイトの1stは乱暴すぎるから、あの頃怖かった。SHAIは雰囲気としての内省感だったから、突き詰めていた訳じゃない。P.M.Dawnはメジャーな歴史から消えた。90'Sのコアなファンじゃないと知らないと思う。けど、彼らの歌詞にあった「愛じゃなかったら道理だ」というフレーズが、妙に好きだったんだよね。

SilkやJodeciやあの頃のR Kellyに内省を感じる訳もなく。そりゃAnniversaryはガツンとしているけど、あれは内省では無いでしょう。96年のAsanteは近かったけど「想いがひっそりとささやく」感覚で、内省メインでは無かったね。そんな意味で、一番ガツンと来たのがMaryJ.の7Daysです。

「当時の気持ちに入り込んだ曲」と「当時の気持ちを俯瞰している曲」があって、この曲は究極的には後者だと思う。女性の「別れた後の痛み」を歌った前者の曲としては、一番最初にガツンと来たのはマライヤのI Don't Wanna CryLove Takes Timeです。あの頃はガチンコのファンだったけど、あの頃のマライヤが一番好きだけど、それでも7 Daysとの差は大きい。見比べればきっと分かる。突き詰めれば、淡々とした描写をしてる7 Daysの方が怖いし、奥底から泣いているから。

あの時、7 Daysを見て一番感じたのは、「去っていった男が一晩だけ戻ってきて、理由を薄々分かっていながら抱かれたんだよね。だからこそ余計に泣いて、だからこそ余計に自分自身の業を見つめているんだよね」
そんな表情をして歌っているMaryJ.がいる。二人の恋愛の出来事を一週間に投影しているようで、実はMaryJ.の心の動きを投影している曲だから。

内省というのは、この状態がスタートラインだと思う。
感情自体は突き詰めても良く分からない。理論的に考えてもドツボに嵌る。けど、感情の変遷は追う事ができる。そして、その作業はこの曲のように妙に淡々した心境なんだと思います。感情を振り返るという事は、感情の変遷を追うこと。その時々の出来事で変化していく感情。その変化自体に価値判断をせずに、あくまでも淡々と追っていくのが大事。すると、その当時は抑えた感情の芽が見えてくる。あの時は「これ位なら大丈夫」と思って、自分自身を納得させた出来事。そんな出来事まで思い出せれば、残す壁は1つだけです。

けど、この最後の壁が超えれないんだよね。
なぜ、あの時、自分は抑えたのか。その答えこそが必要なのだけど、7Daysでは表現されてない。あの曲は女性の業に行っていると思う。そんな恋愛ストレートなMaryJ.の事は好きだけど、男の結論としては個人的にイマイチ。普段から欲・欲と言っている男ほど、ここは違う答えを持ってこないといけない。

その答えこそがInnervisionsなのだけど、これは極北だから。
だから、もっと手前に明確な答えがあると思う。

もちろん、あの頃、そこまで考えて聴いていた訳じゃないです。
単に、Innervisionsまで行けなくて、7Daysよりは前に進んだ状態でもがいてた。もがいているうちに1年は経ったけど、その間ずっと周囲に迷惑かけてたと思う。抜けれなかったね。だから余計にMaryJ.を聴いていたのかも・・・。抜けれないくせに、前に行こうとすると、余計ドツボに嵌る。それも事実かも。

その結論として感じたのは、シンプルに言えば別れる怖さ。
誰だって恋愛初期の時点でそんなにクリティカルな事をしたくないから。ある種の事は付き合っているうちに好転すると思いたいし、たとえそれが勘違いだとしても、そう思える相手と始まるのが恋愛だから。けど、内省として考えた結果が「恋愛初期から我慢は最小限にしましょう」じゃ、下手な標語よりも酷くて泣けてくる。だからこれも、違うと思う。

結局、自分が辿り着いたのは自己イメージ(自己概念)だった。
相手の行動と自分の感情の間に、自己像:エゴがあった。

この答えで納得しない人はゴマンといると思う。けど、冷静に見詰めると、自分が拘っている事こそ「相手の行動→自分の感情」じゃなくて、「自分の行動→自分の感情」なんだよね。「ここまで相手に尽くした結果がこれだった」という時に人は一番落ち込むものだから。以前にもHPで書いたように、ぶっちゃけていえば決算表が赤字なこと。相手が隠して知らず知らずのうちに不倫になってる恋愛であってもそう。妻子がいる事を知った時点で毅然した態度が取れれば、そんなには落ち込まない。7 Daysもそう。帰ってきた元彼氏にずるずる行ったから、余計に後で泣く羽目になっている。Calvin RichardsonのPain it just funny thingもそうだね。この曲は内省レベルまで来てる。それがあの情熱感と共に歌われているから、大好きなんだよね。
「自分の行動→自分の感情」を突き詰めると、傷ついているのは自分の心でなく、自分の自己像:エゴと分かる。どんな人も客観的なイメージに+αした自己像を持ってる。あまりに客観像から外れると虚像になるけど、客観像よりも卑下している人も健康ではない。恋愛をしているうちに知らず知らずに自己像が膨れ上がるからこそ、別れると痛い。こんなそんながあの頃の結論だった。


InnervisionsのALLという単語を聞いた時、僕はやっとその先の道が分かった。自己像止まりで調子に乗ってるから、いつになっても本当の意味では上手くいってないという現実。だからこそ、あの頃、とことんInnervisionsを聴きこんだ。あの歌を聴く事で、自分に対する甘さと愚かさがこの結果になったとハッキリ分かったから。そんな2001年だったけど、「内省=感情を振り返る事」ってシンプルにいえるようになったのは去年だから。こちらも随分と時間がかかったなぁ。


理想はつきあっている間に相手がもつ自分の姿を受け入れていく事なんだよね。けど、お互いになかなか相手にネガティブな部分は言えないものだから。言い過ぎると必ず逆効果になるけど、ゼロでもやっぱり上手く行かない。そんなバランス感覚が大事なんだと思う。

続き
 



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