心の壁、心の扉  そして自己再帰関数のような曲を作るRaheemのこと

 

3/12、13の連続投稿はタイトルからどんどん中身がずれたので書き直しました。これで当面いきます。

恋愛においては「一緒にいて楽しい/心地よい/頼りになる」が一番の判断基準になるけど、まれに「理解」のウエイトが強い人がいる。もちろん最初から理解が強いワケじゃない。けど、何度か「あんたはオカシイ」と言われると「理解」のウエイトが上がってくる。「ヒネてることは否定しないけど、個人的には360度回転してるつもりなんだけど(笑」とか「生まれも育ちもねじ曲がっていただけで、俺自身はストレートなつもりだよ」という言葉にどれだけ納得してくれるか、それが長く付き合う時の分岐点だったりする。


「ひとが本当に苦労した事については、相手を見ただけでその苦労をしたかどうか分かるんですよ」

この言葉を言われた時のことは今でも覚えてる。二十歳の頃だ。
「失礼ですが、若井さんは親戚関係の苦労をされたことが無いですよね」
「え、分かります? 両親が3男と2女だったので、あんまり親戚関係の苦労をした事も見たことも無かったです」
家庭教師で訪れた家で雑談してる時に言われたんだ。宮城の南方の家だったけど、周囲の一族の本家だったから、ふすまを開ければ30畳近くになる大広間がある家だった。昔、こちらにも詳しく書いたしね。

Black Music、R&B-Soulを聴くと理解できるし、理解されると思う事が多かった。
「理解される」という言葉は変かもしれないけど、「僕のために歌を作ってくれた」とまで言いたくなるようなピッタリ感。このピッタリ感って邦楽ではあまり感じたことがなくて・・・だからR&Bオンリーになったんだ。

けど、Raheemは別。
デビュー作は羊の髪型が印象的な「そこそこ」の作品だったのに、どんどん伸びてる。Marvin Gayeの再来と言われる歌手は多いけど、聖と性の中心点をMarvin Gayeのコアとするならば、間違いなくRaheemが受け継いたのだ。

Floacistの2nd:Floetry Rebirthの01:Star Again (Feat. Raheem)を聴いてやっと分かった。この前の彼の3作目も鬼だったが、今回は客演してバックボーカルで参加しているだけなのに、この衝撃度は何なんだろう。もちろんこれまでも衝撃を感じる歌手は多かった。けど、有り得ない場所に扉を作られて、有り得ない形で心の中に入られるのは、、生まれて始めての経験だった。

「若井クンは乱暴に心に入ってくる。なのに私は逆は出来ない。私は、今、あなたから言われた言葉を彼氏に言って欲しい。あの人が今、それを言えないことは分かってる。けど、私は、それを待ちたい」

いまでも細部を覚えているなぁ。二十歳の頃だ。ここまではっきりと言われると不思議と諦める気持ちになれた。「そこまでハッキリ言ってくれてありがとう。じゃあ、最後にひとつだけ。そんな大した事じゃないんだよ。どんなに殻で守っている人でも窓はあるんだよ。外界を覗くための窓が。たとえ本人が見せないようにしていても同等以上の経験をしてれば、場所は分かるんだ」

自分が相手にやってきたことって、逆の立場にならないと真には分からないんだね。火曜日の夜からこの一曲だけ連続リピート。もう200回は越してる。ホントは20回ぐらいで飽きたかったのに。


そして、やっと分かってきた。
Raheemの特徴は、他人に提供した曲の方が分かりやすい。去年のお蔵入りになったKenny Lattimoreの作品でも出てる。呟くようなループで曲を作る。このループのクセ感が普通と違うんだよね。他のプロデューサが作るループは機械的なのに、Raheemが作るループは根源的なブレを内包していて、その揺れ幅が心の何かにアクセスしてくる。結論として、ループというものに再帰があるのがRaheemなのだ。

「自己再帰関数」
大学時代の専門だったプログラミング言語では、ループ構造と再帰構造がある。数学的には再帰構造の方が綺麗。マニアックにいえばSchemeは末尾再帰の最適化が必須。けど、For,Whileループと再帰構造を比べて、再帰の方が根源的だと証明した例を見た事が無い。答えはメートル法と尺貫法みたいなもので、尺貫法の方が根源的なんだよ。そうやって、あの教授とがんがんに喧嘩したかったんだね。やっと30を越して、あの当時の数少ない自分の正しさを説明できるようになった。。


そういえば、この前、久しぶりに北斗の拳を読み返した。全部で27巻のマンガなのにあの密度は何なのだろう。一般的にはラオウの最期の「わが生涯に一片の悔いなし!!」に惹かれるんだろうね。個人的には22巻の暗琉天破で魔闘気が作り出す無重力空間に対抗するためにケンシロウがぐるぐるその場で回転する場面が一番好きで。

自己再帰関数を分かりやすく表現すると、この場面でのケンシロウなんだよね。通常のプロデューサが作るループって、たとえるなら分身の術で敵の周囲をぐるぐる回ってる状態。Raheemのループはその場で回ってる。重力と原点を作るために。これが、有り得ないと思っていた心の扉の、現時点での回答です。

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きっとこの文章は誰にとっても意味不明なんだろう。けど、北斗百裂拳よりも夢想転生よりもこのシーンが心に残ってる人は、必ずRaheemが気に入る。濁流のようなことが生じて、自分の足場さえ無くなる体験をすれば、Raheemのクセ感のあるループの奥が見えてくると思うよ。それだけは保証できます。

ラオウの最後の場面をTシャツにプリントした人がいるなら、このぐるぐる回ってるケンシロウもTシャツにプリントする価値があると思うんだけど(笑 そんな人が街を歩いてたらついつい声かけちゃうかもね。「大丈夫だよ。そもそも全ての地面自体が仮性だから。まず自力で生きてける状態になって、次にそれでも心に浮かぶ事を突き詰めていけばいい」って。自力で暮らせるようになったら親と縁を切る事に躊躇無くなるし、そこで初めて「まあ親も親なりにやってたんだな」って感じるから。自分が強くないのに優しいことは有り得ない。

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「で、若井はそういう娘の殻を割って中に入りたいっていうサディスティックな欲望があるんだよね」
「おい、相変わらずお前はテキトー言うなぁ。そもそも俺自身にとっては殻が壁にならないのだから割るどうこうの世界じゃないよ。あの時だって向こうに彼氏がいる状態で振り向いてもらうために必要以上に喋っただけだし。けど、根本的に「彼氏がちゃんとしてたらあんな表情はしない」と思ってたから、そういう意味ではガキだったよね」

「割るんじゃないなら、なんで殻に拘っているんだよ」
「拘っているわけじゃないけど、殻がある人は俺の事もある程度分かるんだよ。殻で守れるなら俺だってそうしたかったとは思わない事も無いけど、そこまで気にしてもしょうがないしね」
「未だに殻が良く分からんけど、誰か他の共通の知り合いはいないの?」
「うーん、俺も二人しかあった事ないからなぁ。そもそも25歳過ぎて殻って
単に社会不適合だし、そこまで引っ張るのは本人の問題も大きいし。だからもう無理じゃない? いいじゃん殻なんて知らなくちゃいけない世界じゃないよ」
あの時はこんな話をしてたのですが、まさかRaheemで痛感させられるとはね。こんだけ心が揺さぶられるってことは、まだ問題が残ってたという事実か。。
 

 

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