「ナイーブ」から歳を重ねて
99年発売のMarc Nelsonの前作:
Chocolate Moodは本サイトの色々なところで取り上げているぐらいに傑作です。けど、残念ながらジャケとタイトルがチグハグすぎて売れなかった。浜辺で独りいじけているポーズは個人的にはかなりナイスだけど、タイトルとの関連が意味不明。
あのアルバムのタイトルは「Too Friendly」にすべきだったんだよ。シングルカットまでしたんだから。
Too Friendly
「あなたのことはともだちだとおもってます」と言われて振られた事がある男性は世の中に沢山いると思う。少なめに見積もっても3名中1名はいる。ならば、やっぱり歌手にもそういタイトルの曲で歌って欲しいんだよね。なのに「恋愛が終わった」ことを嘆く曲は多くても、この部分を取り上げてくれた曲は少ない。そんな中でMarc Nelsonの曲はTooまでついているから感激大。きっと大事なポイントで男よりも友人としての態度を優先したのだろう。そういう事を何回かやると、その後告白しても
「貴方のことは男として見れない」と振られる羽目になる。前作の07:Too Friendlyを聴くと「男として見れない」と言われて○○寸前になる情景が浮かんでくる。リズムが効いてるナイスなMiddle-UPなのに全体的にナイーブで独りの夜に似合う。ポイントポイントで力強く歌っているのにその声には泣きが入ってる。
これを名曲と言わなければ、一体何が名曲になるんだ??
とこの世に向かって訴えたい気分大。だから今になってもたまにMarc Nelsonの前作は聴きたくなる。流石にマクナイトの1stは完璧すぎる世界だから聴く前に一定量の準備が必要だけど、Marc Nelsonの前作の方は「いじけ度合い」の分だけ窓口が広いから。
そんなMarc Nelsonの07年の3枚目が本作のMarc: My Wordsです。2007年は新作チェックを殆どしてなかったので発売された季節は分かりません。ジャケ的には冬なんだろうね。
そりゃ彼が夏の海岸のジャケだったら卒倒するから。この顔の角度といい閉じられた瞳といい、ナイーブらしさが出ているのだけど、なんか全体的には「もっさい」んだよね。せっかく前回と比べてアルバムタイトルは良くなったのにジャケのレベルは下がってる。そういう
パーフェクトの無さに妙に親近感を感じた貴方は、僕と一緒でMarc Nelsonのガチファンです(笑
そんなガチファンの期待をがっちり答えるのがMarc Nelson。
ホント素晴らしい。ナイーブな疾走感をKeepしたMiddle-UPの曲は今回もばっちり収録されてます。01:Just Say Soを試聴した時点でファンは絶対に買う。アルバムの中で一番疾走感があるのは
08:Sex Me Down。なんでこのタイトルでこの手触りになるのか意味不明だけど、曲は最高。この曲をとことんつきつめても男と女が絡んでる情景は浮かんでこない。どんな情景を歌っても声がナイーブでエロさが少ない。
これだけ曲作りの才能があっても歌手として大成功しなかったのはナイーブが強すぎてエロさが少なすぎるから。そこに惹かれるかどうかだけなんだよね。
もしBoyzIIMenにMarc Nelsonが加入したままの状態だったらどうなっていたのだろう?とたまに考えてしまう。これだけ才能あればBabyfaceがいらなくなる気もする。けど、Marc Nelsonの作る曲はBabyfaceほど一般ウケはしない気もするから、よく分からない。99年の次が07年で8年ぶりの新作。この先もMarc Nelsonがソロ作を発表できるのか、よく分からない。どれだけ本気のファンがついているのかも。。けど、今30歳前後の男性陣にアドバイスするけど、112のナイーブな曲が好きならばBoyzIIMenよりはMarc Nelsonの方にハマルよ。それだけは確かです。
本作、曲のレベルの高さで前作の91点に並ぶと思ってる。全体的にはMiddle-UPの曲は減ったけど、これは歳を重ねたからだろう。
もう海岸まで走っていくような躍動感は無い。けど、その分だけ落ち着いた手触りで、そこに惹かれている。
06:I Don't Wanna Be In Loveの良さ。アルバム中にLong VersionとStrong Versionの2曲を収録しているぐらいに本人も気に入っているのだろう。けど、個人的にはStrongと名付ける所がMarc Nelsonの根本的なWeakなんだと思う。Strongが当然の人はStrong Versionとは絶対に名付けない。空気より当たり前のことについては人は命名することすら忘れるから。
いつもがWeakだからこそStrongとつけたMarc Nelsonに惹かれるか?
個人的には惹かれたい。けど、この15曲目のStrong Versionの一体何処がStrongなのかさっぱり分からない。。だから惹かれるとは言えない。自分よりMarc Nelsonを好きな人に教えて欲しいなぁ。
07:Can I Get Another Chance
この曲こそが一番惹かれる。99年から歳を重ねた事を一番痛感するから。歌詞がついてこなかったけど、
Time Stress Don't Wanna Let Goと歌ってるように聞こえる。その部分にどうしようも惹かれる。泣ける。いやちがう、泣き顔が浮かんでくる。もう今となっては顔の輪郭も殆ど覚えてないのに・・・。
Can I Get Another Chance:あの時、僕には他の選択肢があったのだろうか? あの頃は他の選択肢なんて何処にも無くて一本道だと思ってた。あれから長い時間が経ってやっと気づく。あの頃は全部相手が決めたと思ってた。違う。全部自分が決めていたんだ。
3分3秒という曲の短さ。Marc Nelsonの他の曲に3:30より短いものは無い。この短さがこの歌の意味だと思う。個人的にもこの曲が4分以上続いたら困る。そして続く曲が08:Sex Me Downだから。この連結のマッチ感が半端無い。何度連続で聴いてもSex Me DownにはToo Friendly以上の情景が浮かんでこないのにね。
12:Did I Lose The Chance
個人的に緑をつけたくなる曲を選んだら2曲ともChanceが含まれている。何故なんだろうね。
この曲はDidという単語が示す通り時間軸で過去という雰囲気が強い。07の方が「生」と「泣き」が強くて、こちらの方がLoseという単語が示す通り強さがある。この疑問形はIfの意味でとるべきだと思うから。要するに07は「Getできていたら?」であり、12は「Loseしていたら?」のフェーズ。だから後悔度合いでは07より12の方が低い。こういう聴き方が大事なんだと思う。あんまり同意得られないと思うけど。。
Marc Nelsonらしい良曲が多い傑作だけど、僕はこの中から4曲だけ抜き出して連続リピートしたい。その曲が07→08→12→15でいくのか、06→07→08→12でいくのか、その結論が未だに出ない。Strongの意味がつかめてないから。けど、この4曲は円環でありそれぞれが時計の12,3,6,9の文字盤に対応する。時計の針の根元の場所に「Chance」という単語がある。そういう歌世界。冒頭に「ナイーブから歳を重ねて」と書いたけど、その答えが
Chanceを囲んでその円環を一曲ずつ歩いている
そのChanceという言葉に未来感がゼロなのがMarc Nelsonらしい。円環をぐるぐる回るだけだから、聴いてると行き場の無さがイヤになるかもね。少なくとも前作は海岸を目指してた。きっと朝日を見たかったのだろう。今回はそんな一直線の勢いが無い。けどさ、「今晩は気が済むまで回っていればいいんだよ」って思う。無理に明日を探す必要は無い。明日なんてほっといても勝手にくるから。それが社会人。
冷静に見ると90%には届かない歌世界。けど、残りの10%の人を「鷲掴み」なのも事実なんだよね。明るい時は「えー、俺も10%に入ってるの?いやだなーそれ(笑」と言えるけど、そういう気分の日は「このアルバムこそがドンピシャ」になるね、正直言うと。
こんな事ばっかり書いていると、この作品の売り上げに貢献してMarc Nelsonのためになるのか、逆に売り上げの足を引っ張るのか、その判定すら私自身は全く分かりません。アルバムの中の感じられる部分はわずかだし、「その先のお前の感情が間違っている」と言われたら否定は出来ない。けど、今回の冒頭にあれだけ書く位に好きだったMarc Nelsonの前作よりも、本作の方を気に入りました。前作は振られた直後を思わせる曲群だったけど、今回はそこから膨大な時間が流れてる。だからかな。
----
ちなみに初めて聴くなら間違いなく
前作です。
本作はあそこから3歩は深化してるから慣れてないと窒息するよ。ってそんなにDeepな作品じゃないから「つまらない」って投げ出すぐらいかな。
----
改めてジャケをみる。この伏目がちな目は確かに
「ナイーブ」から歳を重ねてに相応しい。表情全体で未来よりも過去を志向している。Chanceの周りをぐるぐる回っている情景が似合うジャケになっていると思う。
最初のChanceを掴まえたから恋愛が始まって、途中のChanceを掴まえられなかったから終わった。どうせダメになるなら両方掴まえれない方が良かったと思ってる? この痛みを重ねた表情がいい。年に一回ならこういう日があってもいいと思う。そんな意味ではこの表情には惹かれてます。
この冬の格好も個人的にはナイス。じゃあなんでパーフェクトじゃないかっていうと、やっぱり
白さがめだつTシャツ?なんだと思う。まるで下着も真っ白なブリーフのようで、そこら辺は「いい奴」と思わせるけど、垢抜けてないんだよねぇ。この白いTシャツを濃い紺色とかの抑えた色にすれば、かなりナイスなジャケになると思うのだが。
そうそう実は
Marc Nelsonのデビュー作も買いました。まさか1991年にデビューしてたとはね。
動画もあるんだから重ねてびっくりです。やっぱりMarc Nelsonは顔がかなり細長いなぁ。ちなみにアルバム自体はナイーブじゃないです。I Want Youをカバーする時点でナイーブ派とも言えるけど、2作目、3作目ほどナイーブじゃない。
過去の名曲のカバーは納得するけど、それをアルバムタイトルにするのはイマイチかもね。他の曲はアーリー90'Sとでも言うべきミドルの曲。40歳前後の人なら懐かしいかもね。まだ「夜に映えるミドル」という所までは来てない。
04:Count On MeはまるでJohnny Gillのような歌い方で結構珍しい。05:It's My Worldと06:Treat Her Rightが一番あの頃のテイストだね。07:Holidayも08:Summer Loveも悪い曲ではないけど、第一線に出れるほどの作品でもないと感じる。クレジットをみると殆どMarc Nelson本人が製作に関わってないからしょうがないのかもね。R KellyやJoeのデビュー作と同じぐらいに自由に作らせるべきだった。残念。Marc Nelson本人の意思が通ったのはI Want Youのカバーだけだったのかも。
ちなみに彼がリードをしてたAz Yetもメランコリックな曲が多いからハマル人にはハマルと思うよ。曲はいいのでMarc Nelsonの1stよりはこちらの方がオススメ。112のデビュー作を気に入った人はハマルかも。あの作品よりも暗いけど。
Az Yet - Last Night
Az Yet - Hard Say I'm Sorry